室蘭育ちのDNA原点 「鉄のゲージツ家」篠原勝之さん【室蘭】
港の文学館移転10周年 特別講演会
港の文学館移転10周年を記念した特別講演会「鉄と風と旅」が9日、室蘭市海岸町の同館であった。来場者ら約70人は、室蘭育ちでKUMA(クマ)さんの愛称で親しまれる鉄のゲージツ家・篠原勝之さんのユーモアあふれる話に耳を傾けた。
篠原さんは、室蘭市内の製鉄所の溶鉱炉の火で真っ赤に染まった夜空や煙突から立ち上る煙を「懐かしい」と一言。イタンキ浜からの景色が好きだったと語り「ここからの眺めが一番室蘭らしい景色。雲に覆われた方が好きなんだけど、きょうは晴れてるんだよな」と冗談めかし来場者らを笑わせた。
上京してからはビル群やビルを解体する姿を目の当たりにし、そこで「鉄のスクラップを材料にオブジェを作れないか。ここで鉄のまち、室蘭で育ったDNAがあるわけだ」と鉄のゲージツ家としての原点を明かした。
そのほか、1993年にNHK室蘭放送局に設置した「FURAI(風来)」の設置から解体までのエピソードも披露した。今後については「まだまだワクワクすることがいっぱいある。終わった時が終わり。完成なんてものはない」と力を込めた。
最後に文学を目指したことはないが、と前置きした上で「もう一冊くらい書こうと思っている。その際は文学館に置いてほしい。ぜひ皆さんも読んでください」と呼びかけると、会場は笑顔と拍手に包まれた。
高校時代の同級生、今豊さん(81)=室蘭市幌萌町=は「いつも服がペンキや絵の具で汚れていた」と当時を懐かしんだ。講演会を終え、「いろいろ経験しているからこそできる話の数々だった」と感激していた。
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