「サケ缶で世界を目指せ 平塚常次郎と堤清六の生涯」出版 相原さんが学生向け解説、資料提供加藤さん母校に寄贈【函館】
戦前・戦後に函館の経済を支えた北洋漁業の礎を築いた日魯漁業創業者、平塚常次郎と堤清六の生涯を中学・高校生向けに解説したシリーズがこのほど出版された。全道の中学校などに配布される中、筆者でノンフィクション作家の相原秀起さん(61、札幌)と、相原さんに資料を提供するなどした元ニチロ取締役の加藤清郎さん(88)が1日、加藤さんの出身校、函館巴中学校(佐藤雅博校長)を訪れ、本の贈呈式を行った。相原さんは代表生徒に「夢に向かって進み、函館に地域貢献した若者がいたことを知ってほしい」と期待した。
シリーズ本「北海道青少年叢書―北国に光を掲げた人々」は、北海道科学文化協会(札幌)が本道の開発・発展の原動力となった各分野の先人の生き方や業績を、青少年が成長する上の糧として役立つことを願い、読み物として毎年発行。これまで書家の金子鴎亭、野球選手の久慈次郎、喜劇俳優の益田喜頓らを取り上げてきた。道内すべての中学、高校や図書館、市町村教委に寄贈している。第41集は相原さんの「サケ缶で世界を目指せ 平塚常次郎と堤清六の生涯」と、佐々木信恵さん(札幌)が富士メガネの創業者、金井武雄について執筆した。
相原さんは元新聞記者で1995年にサハリン在住、3回の北方領土取材やロシア極東も取材経験がある。今回が初執筆で、ロシアで廃墟となった日魯の工場跡などを見てきた経験も交え、取材してきたことをまとめたいと思い平塚らを取り上げた。
函館出身の平塚、現新潟県三条市出身の堤がアムール川河口のブロンゲ岬で出会い、手探りで紅サケの缶詰製造を開始。強力なライバルとの争いや、堤の死を乗り越えて世界へ飛躍した様子から、函館に何かを残したいとする平塚の思いを5章50ページでまとめた。
執筆には函館勤務時代に縁のあった加藤さんが日魯や平塚らの資料を提供し、取材にも応じた。加藤さんは「二人の生きざまを凝縮している。現地での取材経験から知識もあり、臨場感のある表現でつづられている」と話す。
贈呈式は佐藤校長のほか、生徒会役員6人が参加。相原さんは執筆の思いを話し、旧的場中(巴中の統合前)1期生の加藤さんは中学時代の思い出を話し「友だちや仲間、先生を大事にし、部活や勉強に頑張って」とエールを送った。
相原さんから本を受け、生徒会副会長の吉田あかりさん(3年)は「日魯について詳しくなかったので読んでみたい。函館にゆかりの人を知る良いきっかけになった本をありがとうございます」とお礼を述べた。
A5判で133ページ。全道の各校には1冊だが、函館市、北斗市、七飯町には3冊ずつ、巴中には10冊を贈呈。非売品だが相原さんが送料込みで880円で受け付ける。申し込みは相原さん011・303・0418(自宅、留守電対応)へ。
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