森とアイヌ文化の関わり解説 阿寒湖、一歩園で散策や講演【釧路市】
阿寒湖周辺の森林を管理する前田一歩園財団(新井田利光理事長)は17日、北海道の自然について学ぶ「一歩園自然セミナー」を開いた。今回は「アイヌ文化に見る森林の活用と伝統文化の継承」をテーマに、講師に札幌大学の本田優子教授と植物研究家の高嶋八千代さんが参加。森とアイヌの関わりについて森林散策と講演を行った。
同セミナーは同財団の人材育成事業、自然普及事業の一環で、1985年から行われている。今回は21人が参加し、財団が管理する「湧水の森」と呼ばれる森や川を長靴で歩いた。
森林散策は最初、アイヌの女性たちが森に入る前に行っているというカムイ(神)への祈りの言葉を斉唱して森に入った。人の手が加えられていない川の中を倒木や苔むした木々をよけながら進んだ。近くではタモギタケなどのキノコ類、ベニバナイチヤクソウなどの草花が参加者を出迎えた。
本田教授はカツラ(カツラ科)やキハダ(キハダ科)など、アイヌの生活に関わる植物を紹介。「アイヌにとって水は貴重なもので、ふん尿などを近くですることは許されなかった」など、アイヌの人々の自然観などを解説した。
高嶋さんはツリバナ(ニシキギ科)やコシアブラ(ウコギ科)など植物の特徴を話す一方、エゾシカによる食害で、森の若木が少なくなり、世代交代が遅れている実態などを話した。
釧路市から夫婦で参加した千里ゆう子さん(58)は「アイヌの儀式は男性のイメージがあったが、女性のものもあることは初めて知った。普段、観光地として眺めていた阿寒の森を深く知ることができた」と話した。
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