これまでの経緯や令和４年度の事業概要の説明後、活発に意見交換した参加者たち

【平取】令和４年度「21世紀・アイヌ文化伝承の森」プロジェクト、第１回作業部会（部会長・佐藤和三副町長）が２月27日、二風谷生活館で会場31人、オンライン２人が参加して開かれた。この日は、これまでの取り組みの経緯や令和４年度の事業概要、実施状況、アイヌ文化振興に向けた観光学の学術的・多角的観点からの調査研究について報告が行われたほか、５年度事業計画など協議した。

　同プロジェクトは平成24年に設立。平取アイヌ協会、平取町、北海道森林管理局が締結した「21世紀・アイヌ文化伝承の森再生計画」協定をもとに、森林や動植物の具体的な管理・育成方法を検討しながらプロジェクトの発展、推進を図り、町内の国有林全域や関連性があると考えられる森林河川区域を対象範囲に、アイヌ文化を育んできた森林における文化的所産を保全・再生・活用することを目的とする森づくりに取り組んでいる。

　令和４年度の事業では、アイヌ文化の伝承に必要な自然素材の確保のための国有林野内での有用素材の育成状況の調査、試験栽培、アイヌの伝統的生活空間として相応しい森林の再生を総事業費５４９２万４千円で実施。主な事業では、北海道大学への委託によりアイヌの人たちと地域住民が関係機関と協働して国有林野の保全活用のあり方、観光学など学術的、多角的観点からの調査研究を実施、成果をふまえた提言と支援・貢献、平取町アイヌ文化振興公社への委託により本プロジェクトの実施体制の強化、コタンコロカムイ（シマフクロウ）の持続的な生息空間の拡充、イオル型多層林の形成、アイヌ民具の素材と技術の継承、アイヌの伝統的狩猟文化の今日的継承などに取り組んだ。

　中でも、シマフクロウの生息できる環境づくりとして、専門家の竹中健さんの協力を得てトウナイ川の長知内頭首工に、サケ・マスなどの魚類が遡上できるように手づくり魚道（市民魚道）を仮設した。イオル型多層林の形成業務は、岡村俊邦近自然森づくり協会理事長の指導のもと行い、シマフクロウの巣箱設置、動物侵入防止柵設置予定カ所の支障木伐採と馬搬作業、伝統的利用植物を中心としたアイヌ文化ガイド研修、ＩＷＯＲアイヌ文化ガイドの試行、アイヌ民具の素材と技術の継承業務などを行った。

　北大観光学高等研究センターからは、①包括的フレームとしての文化景観、文化環境の保全のあり方②アイヌ文化と森林を生かした生業の開発③企業林、民有林、町有林やＮＰＯ等との連携、協力促進方策④関係者、関係機関のネットワーク形成と拡充などについて、資料を参考に報告が行われた。

　協議事項では、ＧＩＳ（地理情報システム）を用いた森づくりの方向性に関するゾーニング案の検討状況や令和５年度の事業計画案が示され、伝統的狩猟に関する事例調査としてニュージーランドなどの海外視察を予定しているとした。22日にはプロジェクト推進会議を予定している。