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網走タイムズ

五輪目指し、世界へ羽ばたけ 全日本スキー連盟のアルペン強化選手 石川歌葉さん(網走二中3年)

「目標はオリンピック」と、力強くガッツポーズをみせる石川さん

 【網走】ゲレンデを華麗に下る趣味のスキーと違い、100分の1秒のために全神経を集中させる。そんな競技スキーで全日本スキー連盟2022―23シーズンのアルペン強化選手としてウインターシーズンを過ごしているのが網走二中3年の石川歌葉(うたば)さん(14)だ。

 石川さんがスキーを始めたのは小学1年の時。しかし、そのきっかけは有名選手にあこがれたり、テレビで競技を見てといった〝ありがち〟なものではなく、母のいずみさんの〝勘違い〟だという。

 小学1年生の12月、学校の授業でスキーをすることになった歌葉さんは「授業に追いつけなかったら困る」と感じ、スキーを習いたいと母にお願いしたという。

 そこで、母親は市総合体育館などが開いているスキー教室に応募を考えたが、歌葉さんが受講するには保護者の同伴が必要。どうしようかと思っていた矢先、子どもだけで参加できるという募集のポスターを見つけた。

 「これなら」と、いずみさんは応募したが、その時に見たポスターはスキー少年団の募集。そんなことを知らない歌葉さんは、初めて練習に参加した時、いきなりスキーをつけてスタートゲートに立たされ「あれ?」と、子どもながらに疑問に感じたという。

 さらに、滑り方はもちろん、どうやって止まるかも教わらずに滑らされ「どうやっていくの?」と思っていたが、何とかゲレンデを滑りきった。

 滑るよりも重要な止まり方は「勘でいったら出来た」という歌葉さん。すでに〝大物〟の片鱗は現れていた。

 「滑ってみると楽しいし、ありのままの自分が出せる」と、そこからアルペン競技にハマッていった歌葉さんだが、同時に「暴走できる」とも感じ、それを体現。

 その結果、直滑降でどこまでも滑っていくスタイルに。周囲からは「ハチャメチャサーカス団」の異名をいただき、コーチからは「止まれ!」と怒られることも。しかし、本人は「滑ることに熱中していて、耳に入らなかった」と、どこ吹く風だ。

 それでも、初めて出場した大会で1位となり、2年生になってからは本格的にアルペン競技に取り組むようになったという。

 スキーの練習は冬が本番だが、歌葉さんは夏の体力作りも兼ねてバドミントン少年団にも加入。これがフットワークや敏捷性を身につけるのに役立った。母とダブルスを組んで出た大会で優勝もしており、運動神経の良さは折り紙付きだ。

 中学に進学してからも少年団の活動は継続。並行して、スキーメーカーのサポートも受けられるようになり、メーカーチームの合宿にも参加。本格的に競技に取り組むには、スキーウエアではなくレーシングスーツが必要だが、こちらもメーカーの協力を得るなど、サポート体制も充実していったという。

 そんな競技生活に転機が訪れたのが、昨年2月に長野県野沢温泉村で行われた全国中学校スキー大会(全中)。道予選7位で出場権を得た歌葉さんは、女子回転で200位中11位に。この活躍が認められ昨年3月、道スキー連盟から強化選手指定という通知を受けた。

 これに大喜びしていた歌葉さんだったが、6月には全日本スキー連盟からも強化選手の通知が届き、びっくり。最初は通知が信じられず、同連盟が正式に発表した選手リストを見てやっと信じることができたという。

 それ以来「周りからの目が強くなったので、行動や私生活を一から見直そうと思った」と、全国トップレベルを意識し始めた歌葉さん。一日中、スキーのことしか考えない生活に変わり、つらくストレスに感じることも。

 それでも、アルペンの技術はもちろんウエートトレーニングや食事などのサポートを受けられるのも、自身にとって大きなプラス。特に食事面は「大会や練習で地方に行くとコンビニの食べ物ばかりになるが、そういう時はどういったものを買えば良いかなどを教わることもできた」と、今まで知らなかったことを覚えられ、困ることがなくなったと話す。

 強化選手としての今シーズン。昨年11月から約3週間、アメリカのコロラド州にあるカッパーマウンテンで合宿。さらに年末までは糠平や阿寒など、道内での合宿が続いた。

 新年1月から3月までは、毎週のように大会に出場。目指すは全中だ。

 得意なのは大回転だが、成績が良いのは回転。なぜなら「大回転は2本目で転倒してしまうから」。

 これは、本人も良くないクセと認識しており「周りの圧やプレッシャーもあるけど、原因は自分の滑りにある。今シーズンは、常にポジティブにいきたい」と考えている。

 また「やりたいことはやりたい、やりたくないことはやりたくない」と、良くも悪くも思ったとおりに行動するタイプと自己分析。「大会は好きだが、練習は好きじゃない。でも負けず嫌いなので、負けたくないから練習をしなければ」と話す。

 この点は母のいずみさんにも分かるようで、特に中学生になってから練習の重要性を感じ、最近は自分からするようになったという。

 とはいえ、そこはまだ中学3年生の女の子。合宿で親元を離れ、1人で練習をしなければならないこともあり、孤独感にさいなまれることも。いずみさんは「中学2年までは『高校でやめよう』と言っていたが、3年生になったら『もっと上を目指したい』と言うようになった」。強化選手に選ばれたことで、競技に対する姿勢など、精神面での成長、変化も大きいようだ。

 将来は「オリンピックに出たいので、全国中学スキー大会やジュニアオリンピックなど、どの大会も日本で一番といわれるよう、上を目指したい」と話す歌葉さんは「オリンピックで優勝して、親に恩返しをしたい」とも。

 地方やアメリカなど、家族や友人と離れての生活が続く中で、分かったことがあるという。「ママの作るご飯が一番おいしい。特にグラタンが大好き」と明かした時、夢や目標を語る時よりも輝きが増し、最高の笑顔が現れた。

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