三石昆布の未来を考える【新ひだか】
【新ひだか】日高管内水産振興議員連盟(田畑隆章会長、議員66人)主催のシンポジウム「海水温上昇にともなう日高・三石昆布の未来を考える」は9日、三石本町の町総合町民センターはまなすホールで開かれ、約80人が参加し、基調講演とパネルディスカッションで日高の浜の恵みのコンブをどう守るかを考えた。
日高町村会、日高町村議会議長会、日高総合開発期成会、えりも漁協、日高中央漁協、ひだか漁協後援。
田畑会長や後援の日高町村会長の大西正紀えりも町長の開会あいさつの後、基調講演では、地球温暖化で2090年までに、道内のコンブが著しく減少する可能性を予測した研究グループの北大の四ツ倉典滋教授がコンブ減少のメカニズムや打開策について講演した。
道内生産のコンブの漁獲量は、1989年には天然2万7237㌧だったが、2020年は8520㌧となり、約30年で3分の1に減少。日本の約90%が道内産で、日高は約30%、このうち、えりもの昆布が60~70%を占めている。また、日本の昆布生産は1万3千㌧だが、中国では養殖技術の革新により世界の80%を超える165万1573㌧を占めている。
四ツ倉教授は、「近年、日高昆布(ミツイシコンブ)の漁獲量は減少傾向にあり、気候変動により将来の分布域は大きく変化することが予想されている」とした上で、ミツイシコンブの形態的特徴や分布予測、近緑種、北海道沿岸の種分化の変遷、生育密度と水温の関係などを解説した。今後に向けた対策としては、①海洋環境の改善②将来の分布予測を考慮した種の利用検討と新産業種の探索③コンブの生長特性の改良(育種)④環境変化の影響を受けにくいコンブ生産への転換―などを挙げた。
ミツイシコンブを漁獲し続けるために、「古くから認識され日本の食文化には欠かせない」「日高地方にしか生えておらず天然漁獲が主流」といった強みを踏まえ、天然漁獲量が減少傾向であることや気候変動により日高地方から生育適地が外れる可能性、製品の浜格差などの課題を指摘。「つくり育てるコンブ漁業への転換(養殖の可能性の探索)などの検討が必要ではないか」との見解を示した。
この後のパネルディスカッションでは、田畑会長が進行を務め、大西えりも町長、生産者の池田大輔さん(新ひだか町三石)、加工業の磯貝正之さん(同・みついし昆布)、生産者の佐藤利明さん(浦河町議)、同成田一人さん(えりも町議)、同中野公浩さん(えりも町議)と四ツ倉教授を交えた座談会が行われ、「昆布の持つブルーカーボン二酸化炭素吸収力」「昆布の質が年々低下」「1等昆布の確保が難しい」「岡に住む人ができることをやる」「天候も悪くなって昆布の生育に影響」「雨などにより海に濁り昆布が見えにくい」など活発な意見が交わされ、日高・三石昆布の未来を考えた。
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