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函館新聞

42年8月に下北半島の沖合で戦没「美福丸」を調査【函館】

1942年8月に下北半島の沖合で撃沈された蟹工船「美福丸」の調査をまとめた浅利さん

 函館空襲を記録する会代表の浅利政俊さん(91)=七飯町=は、太平洋戦争中の1942(昭和17)年8月に青森県東通村東方の白浜沖で米潜水艦の攻撃で沈んだ蟹(かに)工船「美福丸」(2559トン)のリポートをまとめた。戦前の函館経済の一翼を担ったゆかりが深い船で、浅利さんは「商業、経済を支えた函館にとって重要な船」と強調。戦没者20人の氏名を明らかにし、数奇な船歴と戦没時の状況をまとめた。

 美福丸は元の船名を「弘済丸」といい、1898(明治31)年に日本赤十字社の病院船として英国で建造された。1900(同33)年に清朝末期の中国で起きた北清事変(義和団の乱)や04(同37)年の日露戦争でも傷病兵の輸送を担った。大正期には鉄道連絡船として青函航路でも運用された。

 26(大正15)年、八木商店(愛媛県)に売却され、蟹工船「美福丸」として改造された。カニの採取から箱詰めまで3時間で加工できる近代的な設備があったことが当時の新聞に報じられている。函館は蟹工船が主な漁場のオホーツク海やベーリング海に向かう拠点港で、浅利さんは「缶詰は主に米英両国に輸出された。函館の経済を支えただけでなく外貨獲得にも貢献した」と指摘する。

 美福丸を魚雷で沈めた米潜水艦ナーワルの哨戒記録をみると、同艦は42年7月に真珠湾から本道近海に向かい、同月下旬には択捉島近海に出没。同8月1日に下北半島沖合で貨物船明和丸、同8日に美福丸を沈めたとある。浅利さんは国立国会図書館収蔵の戦没船員名簿を調べ、亡くなった17~56歳の20人の乗組員氏名を洗い出した。函館の30~40代の3人も含まれた。朝鮮出身の甲板部員1人もあり、浅利さんは「官斡旋の手続きで来日した労働者」と推察した。

 美福丸が沈んだ時期は、旧日本軍が南太平洋地域に版図を広げ、分水嶺となるガダルカナル島を巡る激戦が勃発する時期。国民には連戦連勝を喧伝した一方で、同年6月にミッドウェー海戦で旧日本軍が敗北して2カ月ほどで本土沿岸部への潜水艦の侵入を許し、近海航路の安全を脅かされていたことになる。

 浅利さんは引き続き、美福丸の姉妹船で小林多喜二の小説のモデルとなった「博愛丸」(45年6月、北千島・幌筵島沖合で戦没)など、戦没した他の蟹工船の調査を進めている。浅利さんは「(為政者が起こす)愚かな戦争で個人が死んでいく。命を落とした人に真心を込めて、敵、味方関係なく追悼し、慰霊していく文化が必要。我々世代が後世に残すために、慰霊の形をどうするのか考えていきたい」と訴えている。

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