大沼・ラムサール条約登録10年 環境教育充実、住民の意識向上【七飯】
【七飯】七飯町の大沼、小沼、蓴菜(じゅんさい)沼の計1236ヘクタールがラムサール条約登録湿地となってから、3日で丸10年を迎えた。若者への教育が充実し、住民の条約に対する意識が年々高まっている一方、水質問題をはじめとする課題は解決に至っていない。大沼周辺の保全のため、地域一体で継続して向き合っていく必要がある。
同条約は1971年にイランのラムサールで開かれた国際会議で採択され、正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。条約の基本理念として「保全・再生」「ワイズユース(賢明な利用)」「交流・学習」の3つの柱が掲げられている。大沼は2012年7月3日に登録された。
町は同年6月、地元の自然保護団体や観光業者らでつくる「大沼流域生物多様性保全協議会」を設立、登録後に「大沼ラムサール協議会」に改称した。同協議会では大沼周辺の小中学生に対し、自然に親しみを持ってもらうためのイベント「大沼ラムサール隊」を実施。条約湿地である美唄市の宮島沼や苫小牧市のウトナイ湖を視察したほか、大沼に生息する動物を観察するなど自然散策も行ってきた。また、七飯高校科学部とは生態系の保全に関するチラシとポスターを作成し、町民や観光客らの啓発に役立てている。
大沼岳陽学校(大橋宏朗校長、児童生徒115人)では、特色ある教育として大沼の歴史や地理、環境などについて学習する「大沼学」を導入。1~9年生までテーマを設けて学習することで、地元の良さを知り、他の地域へ発信する力を育んでいる。
昨年度は5年生が道主催の環境教育「フロンティアキッズ育成事業」に参加。湖水や河川水の水質調査などを体験し、児童は「行きたい、住みたい、働きたい大沼にするために正しい行動をする」と理解を深めた。毎年春には湖畔周辺の清掃を行い、環境保全にも力を入れる。村井雄一教頭は「自然や動物への理解が深まり、地元に誇りを持てるようになってきている。ふるさとを愛せる子どもが一人でも多く育ってほしい」と期待する。
植物性プランクトンの大量発生で起きる「アオコ」による水質問題や特定外来生物の在り方など一朝一夕には改善しない長年の課題も多く、次世代へより良い環境を継承しながら解決に向かう必要がある。同協議会事務局の吉田浩平さん(35)は「行政や住民、研究者らが意識を統一させて向き合うべきではないか。協議会としては、引き続き学びの場を提供し、次世代を担う子どもたちの可能性を伸ばしていきたい」と力を込める。
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