バチェラーと平取のかわりを話す田辺さん

【平取】「英国の史料から読み解くバチェラーの足跡」と題した二風谷アイヌ博物館の第１回講座が10日、館内52人、オンライン18人の計70人が参加して隣設の沙流川歴史館レクチャーホールで開かれた。

　平取町にゆかりの深いキリスト教宣教師の英国人、ジョン・バチェラー（１８５４～１９４４）について、ＣＭＳ（英国聖公会宣教協会）などの史料をもとに、宣教活動の足跡やアイヌ文化研究、地域での教育活動の意義を学んだ。

　講師は早稲田大学文学学術院非常勤講師の田辺陽子さん。

　バチェラーの英国聖公会宣教協会（ＣＭＳ）宣教師としての活動は、大きく３つの時期に分けられるという。講座では、函館を拠点に活動していた伝道初期と、アイヌ信者が急増した１８９０年代の平取での動きをとりあげた。

　平取町では、村の首長であるペンリウクの元で、アイヌ語能力を伸ばしたとしても、文法理解は不十分であり、したがってアイヌ語書簡と英語訳書簡を比較する―と誤訳がみられ、平取の古老たちがバチェラーに伝えたかった重要なメッセージが伝わっていなかったのではないかと思われるとも語った。

　英国に残るＣＭＳアイヌ伝道に関する歴史史料は膨大で、今後も新史料発見の余地があり、ただし、宣教師側からみた記述となるため解釈には注意が必要であるとした。

　一方、英国にはアイヌ信徒側が発信した記録はほとんどなく、彼らの声を知るには国内に眠る史料が有望だと話した。

　なお、アイヌ文化博物館では11月28日まで特別展「英国聖公会宣教師ジョン・バチェラーの足あと～伝道活動とアイヌ文化研究～」が開かれている。